University professor
青木 祥さん
脳のもつ稀有な力の一つが、変化する力すなわち脳の可塑性です。もちろん私たち大人も、脳を変化させることでこれから素晴らしい未来を創っていけるでしょう。とはいえ、幼少期の子どもの脳には敵わないかもしれません。特に、マルチスポーツに代表される多様な運動体験は、子どもたちの興味をくすぐると同時に、子どもたちの脳に変化を、言い換えれば心や思考、身体操作に成長をもたらしてくれるのだろうと期待しています。私も一科学者として、多様な運動体験による脳の変容について、神経生物学的視点で解明したいと考えています。さらに、そこに愉しいという感情を紐づけることが重要なのかもしれません。愉しい時には、脳内物質のドーパミンがより多く放出されるはずです。ドーパミンは脳の可塑性に不可欠であることが知られています。したがって、『愉しい』ことは、身体の動きの学習だけでなく、スポーツを通した社会性の獲得、内省や試行錯誤の脳回路の発達を促す可能性があると考えられます。私は一スポーツ愛好家として、子どもたちがスポーツを通して脳を変容させ成長し、素晴らしい大人になり、また次の世代の子どもたちに『愉しい』を伝えていってくれたらと心から願っています。
茂木 康嘉さん
国際的なレベルで活躍している日本人のスポーツ選手が、様々なスポーツ経験を子供の頃にしていたことを知っていますか?メジャーリーガーの大谷翔平選手は、野球以外にスイミングにも取り組んでいました。また、テニスプレーヤーの錦織圭選手もスイミングやサッカー、野球にも取り組んでいたことが知られています。
スポーツ科学の研究分野においても幼少期から専門的に一つの種目に絞ってスポーツに取り組むことに疑問の声が出ています。実際に、オリンピックに代表として出場した選手の多くが、専門とするスポーツ以外の他のスポーツ経験を幼少期に多くしていたことが報告されています。加えて、複数のスポーツを経験することが運動能力の発達にとって好ましい影響を及ぼす可能性があることも指摘されています。
幼少期では、身体を動かす楽しみを経験することもとても大切です。明るいコーチと楽しみながら、様々なスポーツを体験できるのが、コーディスポーツの魅力の一つではないでしょうか。